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がんの放射線治療
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放射線治療

大阪府の放射線治療事情|適切な放射線治療施設を選ぶために

2024.04.25
最新更新日 2024.05.20

大阪府は日本でも屈指の放射線治療を行っている病院数が多いところです。がんと診断された患者やその家族にとって、どの病院で放射線治療を受けるかを決めることは、治療選択の重要な要素です。がんとの闘いは、その治療法を理解し、適切なサポートを受けることでより希望に満ちたものとなります。本コラムでは、大阪府の放射線治療事情に焦点を当て、患者とその家族が必要とする情報を提供します。放射線治療の基本的な仕組みから、施設の紹介、病院を選択する際の注意事項、そして費用と支援制度まで、放射線治療に関する情報を幅広く取り上げます。このコラムが、がんと向き合う皆さんにとって、希望と知識の道標となることを願っています。

※このコラムは、2024年4月現在に調査した内容をもとに作っています。調べたホームページの更新状況によってはさらに古い情報の可能性もあります。実際に医療機関をご利用される際には、当該医療機関に直接連絡するなど、最新の情報をご確認ください。

放射線治療の基本情報

  • がん治療の三本柱といえば、手術、薬物療法(抗がん剤治療・分子標的薬剤による治療・免疫療法など)、放射線治療です。放射線治療は、照射された部分にだげ影響を与える局所療法のひとつです。治療効果も照射されたところにしか出ませんが、照射範囲外に副作用が出ることもありません。
  • 限局した腫瘍の根治をめざす治療から症状を和らげるための治療まで、がんの様々なステージに放射線治療が行われます。また、より効果を高めるために、手術や薬物療法と併用することもしばしば行われます。
  • 放射線治療はがん細胞のDNAにダメージを与えることで正常な細胞分裂や増殖を阻止し、死に至らせます。
  • 放射線治療には、装置を使って体の外から腫瘍に向かって放射線を照射する外部照射、放射線を出す物質を腫瘍のあるところに直接挿入(刺入)して中から照射する密封小線源治療、飲み薬や注射薬を使って放射線を出す物質をがんまで運んで照射する内用療法があります。
  • 外部照射で最もよく用いられる放射線はX線で、同じ装置で電子線による治療も可能です。外部照射には、ほかにも、重粒子線治療や陽子線治療などがあります。
  • 高精度放射線治療は、コンピュータや工学ロボットの技術を用いて通常の放射線治療よりもさらに精密に(精度よく)照射する外部照射です。強度変調放射線治療(IMRT)定位放射線治療(SRT, SRS, SBRT)などがあります。周囲の正常細胞に照射される線量を極力低減することで腫瘍への照射線量を上げ、より高い治療効果を発揮します。
  • 放射線治療は、副作用のリスクを低減させるために分割照射が行われます。正常細胞ががん細胞に比べて放射線のダメージからの回復能力が高いことを利用した方法です。正常細胞があまり照射されない定位放射線治療では1~8回程度の少ない回数で照射されますが、通常は、10~35回程度で照射します。1日1回ずつ、月曜日から金曜日までの週5回照射されることが多いので、照射期間は2~7週間程度かかることになります。
  • 放射線治療の副作用には、照射期間中に発症して照射が終了すると徐々に自然回復する急性期有害事象と、照射終了後3~6か月以降に発症して、なかなか治りにくい晩期有害事象とがあり、放射線治療のリスクです。上記のようなさまざまな工夫によりリスクを可能な限り低減させるように治療計画が立てられています。
  • 放射線治療には様々な職種の医療従事者が関与します。医師、看護師、医学物理士、診療放射線技師、事務員などです。これらに患者ご自身とご家族も加わって、チーム医療を行うことが肝要です。

大阪府の放射線治療施設

  • 大阪府は日本屈指の放射線治療施設密集地域と言えます。放射線治療の専門医も多く、日本放射線腫瘍学会のホームページによると、日本の放射線治療専門医の総数1442名中、大阪府は133名で、東京都の187名に次いで第2位です(2023年12月25日現在)。
    https://www.jastro.or.jp/medicalpersonnel/aboutdoctor/cat/
  • また、大阪府医療機関情報システム*と大阪国際がんセンターのがん対策センター**から総合的に数えると、大阪府の放射線治療施設は64施設です。
    *: https://www.mfis.pref.osaka.jp/apqq/qq/men/pwtpmenult01.aspx
    **:
    https://osaka-gan-joho.info/cnow/hospital
  • 大学病院が6施設、国立病院が8施設、府立病院4施設、市立病院10施設、私立病院36施設です。
  • 二次医療圏*別にみると、

*二次医療圏:都道府県が医療計画を定めるために、主として病院の病床の整備を図るべき地域的単位として区分する区域設定。大阪府は8つの二次医療圏に分けられている。

  • 国指定がん診療連携拠点病院**17施設、大阪府がん診療拠点病院*** 36施設です。
    **国指定がん診療連携拠点病院:がん対策基本法に基づいて、質の高いがん医療の全国的な均てん化を図ることを目的に整備された病院。厚生労働大臣が指定。大阪府に17病院ある。
    ***大阪府がん診療拠点病院:5大がん(肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん及び乳がんをいう。)の診療機能が高い病院。大阪府知事が指定。府内で46病院。
  • 日本放射線腫瘍学会が認定している施設が18施設あります。
    https://www.jastro.or.jp/medicalpersonnel/recognition/jastro/jastro.html#celistn27
  • 常勤の放射線治療専門医が2名以上いる施設が20施設、1名が28施設です。
  • 年間に新たに放射線治療を開始する患者数では、1000件以上が5施設、500~1000件が10施設、300~500件が5施設、300件以下が33施設です。

  • 高精度放射線治療について、定位放射線治療と強度変調放射線治療の両方が可能な施設は36施設、どちらか一方が可能な施設は10施設、ガンマナイフ治療が可能な施設は4施設です。
  • 密封小線源治療をしている施設が10施設です。

放射線治療施設を決めるときの留意点

病院の場所

  • 放射線治療は一般に、1から8週間程度の期間で行います。病院が通院しやすい場所にあるか、通院が難しい場合、入院でも治療可能か確認しましょう。病院によってはご自宅や最寄駅から送迎便を出しているところもあるようです。

常勤の放射線治療専門医の数

  • しっかりとした治療を受けるのなら、常勤の専門医がいるところがよいでしょう。とくに、高精度放射線治療を受ける場合には、放射線治療を専ら担当する常勤の医師(放射線治療について、相当の経験を有するものに限る。)が1名以上配置されていることが義務付けられています。強度変調放射線治療の場合には2名以上が必要です。こういった条件を満たしていないのに高精度放射線治療をしている施設がみられます。日本放射線腫瘍学会の認定施設を選ぶことも一つの方法です。

手術や薬物療法と併用するならがん診療拠点病院も考慮に

  • ただし、放射線治療の設備がなくてもがん診療拠点病院に指定される場合があります。この場合には地域の設備のある病院と連携をとることとなっていますので、ご留意ください。

治療実績の豊富な施設

  • 年間の新規照射件数が200~300件程度の病院が多いようです。300件以上の施設は実績が豊富と言えるかもしれません。逆に、100件以下の施設は、ある疾患にのみしぼって照射しているなどの理由がないなら実績豊富とはいいがたいと思います。また、1000件を超えるところは大学病院などの大病院です。安心感は大いにあり、重要な要素だと思いますが、待ち時間が長いなど、デメリットもあるでしょう。

相談体制が整っている施設

  • がんと診断されたときから、患者と家族には様々な心配や不安があることでしょう。がん診療拠点病院にはがん相談支援センターがあります。それ以外の病院でも、多くの病院は相談窓口がありますので活用しましょう。
  • 専門医相談外来セカンドオピニオン外来などを設けている施設は相談しやすいかもしれません。

費用と支援制度

公的医療保険

  • がんに対する放射線治療は、そのほとんどが健康保険の適応範囲内です。高額療養費制度も利用できます。
    *高額療養費制度:保険医療機関の窓口で支払う医療費を一定額以下にとどめる、公的医療保険制度における給付のひとつ。年齢、所得などによって負担額が異なる。

自由診療

その他の公的支援制度

その他にも、国や大阪府による公的な支援制度がいくつかあります。

仕事ができず、収入に不安があるとき:疾病手当金

一定の障害状態になったとき:障害年金

自立した日常生活の維持に不安があるとき:介護保険

生活福祉資金貸付制度

まとめ

  • 放射線治療は、がん治療の重要な一環であり、大阪府には放射線治療が可能な高度な医療機関が多く存在しています。このコラムでは、放射線治療の基本情報から始め、大阪府内の放射線治療施設の概要を紹介しました。施設を選ぶ際には、専門性設備立地相談体制などを考慮することが重要です。放射線治療のほとんどが健康保険の適応ですが、費用面に不安がある場合には、支援制度を活用することができます。最後に、がん治療における放射線治療の重要性と、患者と家族が希望を持ち、前向きな姿勢を保つことの重要性を強調します。放射線治療は、厳しい挑戦であるかもしれませんが、適切な情報とサポートを受けながら、一歩ずつ前進していくことを願っています。

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  • 高橋 正嗣
  • 彩都友紘会病院 医局長、放射線科部長

専門分野:放射線治療、高精度放射線治療全般
専門医資格:放射線科専門医、日本放射線腫瘍学会認定医、日本医学放射線学会研修指導者

〒567-0085 大阪府茨木市彩都あさぎ7丁目2番18号

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